放射線治療科
医師名 | 役職 | 学会専門医・認定医 |
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近藤 聖子 | 科主任部長 | 日本医学放射線学会会員【放射線治療専門医】【研修指導者】 がん等の診療に携わる医師等に対する緩和ケア研修会修了 |
島谷 康彦 | 科部長 | 日本医学放射線学会会員【放射線治療専門医】【研修指導者】 日本核医学会会員【専門医】【PET核医学認定医】 がん等の診療に携わる医師等に対する緩和ケア研修会修了 |
1.放射線治療について
放射線治療は、がんの治療において、手術や抗がん剤などの薬物治療とともにとても重要な役割を担っています。放射線治療は、患者さんへの負担が少なく、日常生活を維持しやすいという特徴があり、日本では、がん患者さんの約30%が放射線治療を受けています。
放射線は目に見えず、身体にあたっても何も感じませんが、身体の中のがん細胞に届き、ダメージを与えます。正常の細胞もダメージを受けますが、適切な量の放射線を毎日少しずつ数週間かけて照射すると、がん細胞のほうがより多く死滅し、正常細胞は回復していきます。この差を利用することで、身体の機能や形状を保ったまま、がんを治療することができます。
2.放射線治療の適応
全身のあらゆる部位に発生した、がんなどの悪性腫瘍が放射線治療の対象となります。一部、良性の疾患も治療の対象となることがあります。病状や治療の目的に合わせ、手術や抗がん剤と組み合わせて治療したり、放射線治療だけで治療を行ったりします。
3.放射線治療が行われる代表的な疾患
乳がん
乳房温存手術の場合やリンパ節転移がある場合、手術後の再発予防目的で患側の乳房や周囲のリンパ節領域に放射線治療を行うことが勧められます。25回の治療を5週間で行うことが多いですが、乳房温存手術後で乳房照射の場合は、16-20回の治療を3-4週間で行う方法を採用しています。
肺がん
進行度に合わせて、放射線治療単独で行う場合と、抗がん剤治療を併用して行う場合があります。主に30回の治療を6週間かけて行います。ステージⅠ期の小さな肺がんは、定位放射線治療という手法で、主に1週間で4回の照射を行います。
前立腺がん
手術と同等の効果が期待でき、身体の負担が少ない治療として、放射線治療を受ける患者さんが増えています。従来は、約38回の治療を8週間で行う方法が標準治療でしたが、最近は、回数を少なくした寡分割照射が同等の効果、副作用であることが示され、当院でも、原則20回の治療を4週間で行っています。
緩和照射
完全治癒をめざした照射だけでなく、がんの疼痛緩和や呼吸苦の改善、出血を止めるなど、患者さんのQOL(生活の質)向上を目的とした放射線治療も非常に有効です。様々な症状を緩和させるだけでなく、腫瘍の進行を抑えることも期待できます。
4.高精度放射線治療について
照射機器や技術の進歩により、正常臓器を避け、病巣に放射線をより集中させた治療が実現しています。必要に応じて、以下のような高精度放射線治療を行っています。
画像誘導放射線治療
照射直前のX線やCT画像を用いて、精密に位置合わせを行い、照射を行う方法です。ミリ単位で、正確な位置に照射することができます。
強度変調放射線治療(IMRT)
照射野の形状を変化させながら照射することで、複雑な腫瘍の形状に合わせて線量を高めつつ、正常臓器の線量を低減するような治療を行うことができます。事前の治療計画や検証に時間をかけて行います。
定位放射線治療
限局した小さな腫瘍に対し、固定精度を厳しく保ち、高線量を集中して短期間で照射を行う方法です。腫瘍に対し、高線量を照射することにより、治療効果を高めることができます。
当院の放射線治療装置:Varian社製Clinac iX
治療計画装置:Varian社製 Eclipse
脳定位放射線治療用システム:BRAINLAB社製 iPLAN
5.放射線治療のすすめ方
①初診
放射線治療の専門医が診察し、病状や種々の検査結果と合わせて、最適な放射線治療の方法を決定します。
②位置決めCTの撮像
患者さんは位置決めCT装置のベッドの上に横になって安静にしていただき、身体に印をつけてCTを撮像します。必要に応じて固定具を作成します。(30分~1時間)
③治療計画の作成、検証
CT画像を元に、治療計画装置を使って、最適な照射プランを綿密に作成し、線量計算、プランの検証を行います。(1日~1週間)
④治療開始
すべての準備が整ったら、照射を開始します。
患者さんは治療装置のベッドの上に横になって、安静にしていただきます。
治療時間は、治療台での位置合わせ、画像確認などもあわせて、15-20分程度です。
病変の数や照射方法によっては、30-40分かかることもあります。
照射中は、熱さや痛みを感じることはありません。
照射は原則、平日毎日(土日祝はお休み)行います。
治療中は適宜、医師の診察や看護師によるケアを受けていただき、安心して治療を継続していただけるように努めています。
6.放射線治療に関わるスタッフ
これらの診療は、放射線治療専門医、診療放射線技師、医学物理士、看護師が協力して行います。
当院では、常勤の放射線治療専門医が2名(+非常勤医)、放射線治療専門技師および品質管理士、医学物理士、がん放射線療法看護認定看護師などの資格者が常駐しており、それぞれの専門性を生かした、チーム医療を行っています。また、各診療科、化学療法室、緩和ケアチーム、がん相談支援室など、様々なチームとも連携をとって、患者さんに最適な医療を提供できるように努めています。