患者さまへ

当院では、ヘルシンキ宣言(人間を対象とする医学研究の倫理原則)ならびにGCP(Good Clinicl Prctice)を順守し、治験・臨床研究を行っております。

治験とは

新しい薬の候補を患者さまに実際に使用していただいて行う臨床試験のことを治験といいます。患者さまの人権や安全性に配慮しながら、効果と副作用について確認します。こうして得られた結果をまとめて国に提出し、厳密な審査を受け、承認を受けたものが薬となります。現在使われているお薬は、たくさんの方のご協力によりうまれてきたものです。

薬が誕生するまで

くすりのもとを発見!

基礎研究

研究者や医師が「病気の原因」について詳しく研究し、「くすりのもと」になりそうな物質を探します。

動物で試験

非臨床研究

様々な実験で選別された「くすりのもと」を動物を対象にどんな作用があるかを慎重に検討するための試験をします。
試験の結果、病気に対する効果が期待でき、大きな副作用がないと確認された「くすりのもと」は「くすりの候補」となります。

実際に使ってみる

治験

ここから「くすりの候補」が人に使われます。「くすりの候補」が「くすり」になるために、下に示す3段階の厳しい試験を通して、人における効き目(有効性)や副作用(安全性)を調べます。
第Ⅰ相試験→第Ⅱ相試験→第Ⅲ相試験

承認申請 試験結果をまとめて国(厚生労働省)に提出し、「くすり」になれるかどうかの審査を受けます。
くすりの誕生 ここまでたどり着けるのは25482分の1の確率程度。9〜17年かかることもあります(日本製薬工業協会ホームページより)。
製造販売後調査 「くすり」として、たくさんの人に使われた場合の効果や安全性、承認時までに得られなかった副作用などを調べます。

治験/臨床試験とは

第Ⅰ相試験

安全性・薬物動態試験

  • 主に健康男性を対象として行います。
  • 抗がん剤の場合は患者さんが対象となります。
  • 副作用について注意深く調べます(安全性)。
  • 「くすりの候補」が、体の中でどのくらいの速さで吸収され、どのような作用を示し、どのくらいの時間で体外に排出されるか(薬物動態)を確認します。
第Ⅱ相試験

有効性・安全性・用量の確認

  • 少数の患者さんを対象として、「くすりの候補」の効き目(有効性)、副作用(安全性)とともに、くすりとして効果のある量や使い方(用量の確認)について調べます。
第Ⅲ相試験

有効性・安全性の検証

  • 大勢の患者さんを対象として、「くすりの候補」の効き目(有効性)、副作用(安全性)について最終確認をします。

治験の流れ

事前説明 はじめに治験担当医師や治験コーディネーター(CRC)などから治験に関する詳しい説明を受けます。
治験の目的や方法、検査の内容、来院回数、治験薬(くすりの候補)の予想される効き目と副作用などについて記載された説明書を使って説明します。
疑問点などがあれば、どんどん質問してください。
同意・署名 治験の内容を理解し、治験に参加することに納得したら、同意書に署名と日付を記載してください。(インフォームドコンセント)
参加条件の確認 参加条件は治験によって異なります。
今現在かかっている病気や、決められた日時に病院へ通院できること、年齢、性別など、治験によって詳しく決められています。
治験への参加に同意した方は、その治験に合うかどうかを診察や検査で調べることになります。結果によっては、本人が参加を希望していても、参加できない場合があります。
治験開始 治験担当医師から指示された用法・用量を守って、一定期間治験薬を使用します。
診察・検査 治験によっては通常よりも来院回数、採血、採尿、血圧測定などの検査が増えることがあります。症状の具合だけでなく体調の変化を詳しく調べます。
治験終了まで行われます。

治験Q&A

Q1.治験参加のメリットは?

(1)新しい治療を受けるチャンスがあります。
(2)将来同じ病気で苦しむ患者さんの治療に役立つ「新しいくすり」を誕生させるという社会貢献性があります。
(3)検査代や診察費がいつもより安くなることがあります。
Q2.治験参加のデメリットは?

(1)未知の薬を使用する不安感があります。
(2)治験薬の服用方法、服薬時間、回数などを正確に守っていただかなくてはなりません。
(3)いつもより来院する回数や検査が多くなることがあります。
Q3.途中でやめることはできますか。
A.参加する人の意思により、いつでもやめることができます。また、途中でやめた場合も、通常の治療を受けることができます。参加をやめたことにより、その後の治療に不利益を受けることはありません。
Q4.個人情報は守られますか。
A.治験に参加する人のプライバシーや人権は厳重に守られることが、くすり全般に関する法律(薬事法)や薬事法に基づいて国が定めた「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」(GCP)に定められています。治験の結果は、資料として利用されますが、参加した人の個人情報が公表されることはありません。いかなる場合も、個人を特定できることはなく、プライバシーは守られます。
Q5.CRC(治験コーディネーター)はどういう人ですか。
A.治験に参加する人が安心して参加できるようにサポートします。治験に関する専門知識を持ったCRCが、治験を実施する医師をサポートするとともに、治験に参加する人の相談窓口となる役割を担っています。多くのCRCは、看護師・薬剤師・臨床検査技師など、看護や薬や検査の知識を持つ資格者です。
分からないことや心配なことがありましたら、遠慮せずに治験担当医師、CRCにご相談ください。
Q6.プラセボってなんですか。
A.プラセボとは、見た目や味は治験薬と全く同じで、薬の成分が入っていない「偽物のくすり」のことです。
「くすりの候補」の効き目や副作用を正しく判断するために患者さまを二つのグループに分け、一方には「くすりの候補」を、もう一方にはプラセボを服用してもらう試験をおこなうことがあります。
Q7.他の病院にかかってもいいですか。
A.病気の種類や症状の程度などによって、参加が可能かどうかが決まります。緊急性がない場合には、治験に参加している病院にかかっていただくことをおすすめします。